折原さんの生産地は、千葉県南房総市・丸山町である。
その歴史は戦前にさかのぼり、町の南部にある真野地区でユリの球根をアメリカへ輸出していたことに始まる。
真野地区は山あいに位置し、広い田んぼをつくるには適していなかった。この農地としての不利な条件が、逆に露地での花づくりに向いていたというわけだ。
現在の丸山町では、町の中央部にハウスが立ち並び、レースフラワーを中心とした花の生産が盛んに行われている。
今や全国でもその名を知られる、花の一大生産地となっているのである。
折原園芸
折原利明さま
千葉県南房総市丸山町で、一年を通してホワイトレース、ヒマワリ、ハーブ、ニゲラ、タラスピなど草花を中心に生産している。「楽しむために努力する」をモットーに、ご自身のパワフルさと農園のチームワークを活かし、地域にも貢献する花生産を行っている。
折原さんの圃場を訪れると、スタッフとの温かなコミュニケーションと、働きやすい環境づくりへの真摯な姿勢を強く感じた。
折原さんのモットーは「自分を3人作る」。これを実践するために、スタッフが自ら考え、行動できる場を整え、全員が意欲的に仕事に取り組めるようにしている。栽培品目ごとにチームを作り、リーダーを任せて作業の負担を軽減しながら、人材育成にも力を入れている。
この組織力の強さは、ただの「人望」では片付けられない。折原さんの信念「戦略無くしては勝利はない」が根底にあり、その考えが確かな結果を生み出している。消防団やサッカー、PTAなど、さまざまな組織での経験が、今の大規模農業を支える組織作りに活かされているのだと感じた。
そして、どんなに忙しい中でも折原さんが忘れないのは、スタッフへの愛情。社員寮や施設への投資を惜しまず、スタッフがやりがいを感じられるように環境を整えている。「自分だけでなく、組織としてサイクルを回す」という姿が折原園芸の強みであると感じた。
中国人農業研修生を雇用し、年間を通じて安定した雇用体制を整えるために「ヒマワリ」を始めたのも、社員を守るための行動であった。
「人生、楽しむために努力する」と話していた折原さん。楽しむ為に戦略を立てて行動し続ける姿が、美しい花を生産し続けている折原園芸の魅力を感じた。
取材の中で、今後の展望について尋ねると、折原さんは「長男に三代目を継がせること」と話してくれた。息子のことを「弟のような存在」と語り、二人の関係はまさに戦友のよう。折原さんは「導くことはするけれど、決断は常に息子に任せている」と話し、息子の成長を温かく見守っている。息子は若いながらも強い意識と覚悟を持っており、その姿勢に尊敬の眼差しと信頼を寄せていた。
これからの折原園芸がどう進化していくのか、その未来がとても楽しみである。
折原園芸では、通年を通してレースフラワーやタラスピなど多様な花を栽培している。
中でも夏の主役として定着しているのが、力強く咲き誇るヒマワリである。
しかし、このヒマワリは創業当初からの生産品目ではなかった。
もともと夏は出荷量が少ない「閑散期」。そんな中でも、中国人農業研修生をはじめとしたスタッフが年間を通して安定して働ける環境を整えたい――その想いから、夏の新た生産品目としてヒマワリの栽培が始まったのだ。
粘土質の土壌はヒマワリには適さず、当初は苦労も多くあった。
それでも、地道に土壌の改良を重ね、水や肥料の管理も徹底し、
「採花1か月前から徐々に水を制限し、最終的には地面がひび割れるくらい水を切る」
調整を重ね、ヒマワリに適した栽培方法を模索して、引き締まった茎と鮮やかな花を持つ、高品質なヒマワリを育てることに成功した。
現在ではその品質が高く評価され、毎年「帝国ホテル」のエントランスに飾られ、多くの方に季節の彩りを届け、その鮮やかな花色が訪れる人々の心を明るく照らしている。
「帝国ホテル」のエントランスを彩る夏の風物詩として、多くの来館者に楽しまれているのだ。