フレネットHIBIYA

千葉県茂原市
三宅花卉園

千葉県茂原市にある三宅花卉園は、温暖な気候と豊かな自然に囲まれた場所で、1972年に切花を中心とした花づくりをスタート。現在は2代目の三宅泰行さんが、アマリリスやアルストロメリア、リューココリーネ、ラケナリアなど、彩り豊かな花々を育てている。
花の生産にとどまらず、新しい品種の育種や、専門家と協力したオリジナルの土づくりにも力を注ぎ、探究心と創造力を兼ね備えた唯一無二の花農家として注目を集めています。スタッフとともに、自然に寄り添いながら、化学農薬を抑えた環境にやさしい栽培に取り組んでいる。

三宅花卉園
三宅花卉園 三宅 泰行さま

「こだわらないことがこだわり」と語る三宅さん。既成概念に縛られず、「いい」と感じたことを素直に受け入れ、自分らしい形で昇華させる姿勢が印象的。その柔軟さと行動力こそが、唯一無二の三宅さんの美しい花々を生み出し続ける秘訣になっているのでしょう。

育種にかける想いと姿勢

三宅花卉園の育種の出発点には、園芸研究家・育種家の平尾秀一先生の存在がある。
「原種は神が育種した花」「原種から掛け離れた育種は作らない」といった言葉に強く影響を受けた三宅さんの父の姿勢を受け継ぎつつ、
「想像できない組み合わせを作りなさい」という父自身の教えも大切にしながら、三宅さんは独自の育種を続けてきた。

これまで、さまざまなチャレンジングな育種に取り組んできた。初期には30以上の交配パターンから、わずか2〜3品種を選び抜くという、非常にシビアな選抜も行ってきたという。
なかでも印象的なのは、パープレアの育種。およそ20万粒ものタネをまき、その中からアルビノ個体にたどり着いたそうだ。
膨大な手間と時間をかけながらも、ひとつの可能性を信じてやりきる。そんなど根性さも三宅さんの魅力だと感じた。

選抜で一番に見るのは「美しさ」

三宅花卉園が育種で最も大切にしているのは、「美しさ」である。
栽培のしやすさや生産性といった実用的な要素ももちろん考慮するが、それ以上に、まずは見た瞬間に心を動かされるような花であるかどうかを重視している。

アルストロメリアには控えめで上品な風情を、アマリリスにはより華やかさを。
それぞれの花が持つ本来の姿を見極め、自然の理にかなった育種を目指している。

その一方で、三宅花卉園では、原種や古い品種を守りながら今に受け継ぐことにも力を入れている。
花びらに斑点のない「スポットレス」や、香りのある「カリオフィラエア」など、希少な品種を含め、アルストロメリアだけで約300品種を育成。
そのほかの品目も合わせると、数百種類にのぼる多様なコレクションを抱えており、これが三宅花卉園ならではの大きな強みとなっている。
なかでも「スポットレス」は、世界で初めて三宅花卉園から生み出された品種であり、その育種力と美意識を象徴する存在だ。

三宅花卉園が大切にする土づくりと栽培管理

三宅花卉園では、花づくりの基本となる「土」にも強いこだわりを持っている。
年間を通じて土壌成分の分析を行い、その結果を毎週のミーティングでチーム全員が共有。
これは、勘や経験に頼るのではなく、安定した品質の花を咲かせるための、科学的で再現性のある栽培管理を目指す取り組みだ。

しかし、三宅さんは数値だけに頼るのは違うとも考えている。
「農業は自然を相手にする仕事だから、最終的には自分の目で見て、手で触れて感じる経験と勘が何より大事」
だからこそ、社員一人ひとりに「自分の予測を持つこと」を伝え、データだけでは測れない農業の本質に向き合う力を育てている。
こうした人材育成が、三宅花卉園の花に繊細さと美しさをもたらしているのだと感じた。

堆肥づくりにも、三宅花卉園ならではの工夫

もみ殻や米ぬかなどを使った「ぼかし」と呼ばれる堆肥を自ら手づくりし、
発酵や熟成の過程を大切にしながら、素材や配合のバランス、発酵の進み具合を香りや手触りで確認。
微生物の働きや栄養バランスを細かく調整し、土の状態を常に見守っている。
こうした日々の積み重ねに加え、専門家による定期的な土壌診断も取り入れながら、三宅花卉園では独自の「完全有機培養土」を開発・使用している。
この培養土は、土の中の微生物を活性化し、植物本来の力を引き出すことで、美しい花を安定して育てる役割を担っている。
さらに環境への配慮として、使用済みの培養土を土壌消毒し、再利用する取り組みも行っている。
現在は全体の約6割を再利用し、残りの4割に新しい土を混ぜることで、土が砂状化するのを防ぎつつ、物理的な性質や栄養バランスを安定させている。
また、使い切れなかった土は親戚の植木屋さんに渡し、別の形で再活用するなど、無駄のない循環を大切にしている。

使い終わった土にもしっかり役目を持たせ、最後まで無駄なく活かしきる。そんなところにも、
三宅花卉園の花づくりへのまっすぐな姿勢と、人と自然を大切にするあたたかな心が表れているように感じた。

(2025年6月取材)

その他の取扱い品種(一部抜粋)

グラジオラス オーキッドフローラス

チューベローズ

ユーコミスコモサ

リューココリーネ ジャンパンブルー

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